枕草子 第66段「草は」 
 

作者名  清少納言 (ca.966-?)
作品名  枕草子
成立年代  ca.1008?
 その他  文中、【 】内にカタカナで今日の標準和名を示した。
 
 草は、菖蒲
【ショウブ】、菰(こも)【マコモ】。葵(あふひ)【フタバアオイ】、いとをかし。神代よりして、さるかざしとなりけん、いみじうめでたし。もののさまもいとをかし。おもだか【オモダカ(面高)】は、名のをかしきなり。心あがりしたらんと思ふに。三稜草【ミクリ】。蛇床子【ヒルムシロ】。苔【コケ】。雪間(ま)の若草。こだに【ツタ】。かたばみ【カタバミ】、綾の紋にてあるも、ことよりはをかし。
 あやふ草
【不詳】は、岸の額(ひたひ)に生ふらんも、げにたのもしからず。いつまで草【不詳】は、またはかなくあはれなり。岸の額よりも、これはくづれやすからんかし。まことの石灰(いしばひ)などには、え生ひずやあらんと思ふぞわろき。ことなし草【不詳】は、思ふ事をなすにやと思ふもをかし。
 しのぶ草
【ノキシノブ】、いとあはれなり。道芝【シバ】、いとをかし。茅花(つばな)【チガヤ】もをかし。蓬【ヨモギ】、いみじうをかし。山菅【スゲ】。日かげ【ヒカゲノカズラ】。山藍【ヤマアイ】。浜木綿(はまゆふ)【ハマオモト】。葛【クズ】。笹【ササ】。青つづら【フジカズラ】。なづな【ナズナ】。苗【イネの苗】。浅茅(あさぢ)【チガヤの群生】、いとをかし。
 蓮
【ハス】(はちすは)、よろづの草よりもすぐれてめでたし。妙法蓮華のたとひにも、花は仏にたてまつり、実は数珠(ずず)につらぬき、念仏して往生極楽の縁とすればよ。また、花なき頃、みどりなる池の水に紅(くれなゐ)に咲きたるも、いとをかし。翠紅翁とも詩に作りたるにこそ。
 唐葵
(からあふひ)【フユアオイ】、日の影にしたがひてかたぶくこそ、草木といふべくもあらぬ心なれ。さしも草【ヨモギ】。八重むぐら【カナムグラ】。つき草【ツユクサ】、うつろひやすなるこそうたてあれ。
 


 織りこまれた花   ショウブマコモフタバアオイオモダカミクリヒルムシロコケツタカタバミノキシノブシバチガヤヨモギスゲヒカゲノカズラヤマアイハマオモトクズササツヅラフジナズナイネハスフユアオイカナムグラツユクサ 




跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
跡見群芳譜サイト TOPページへ カワニナデシコ メナモミ 文藝譜index 日本江戸時代以前index